Ａ　オスマン帝国は，デウシルメ制度という，スルタンの近習（きんじゅう）や国家官僚，軍人を育成する独自の制度を持っていた。16世紀中ごろに(1)オスマン帝国の首都に駐在したハプスブルク朝の使節ビュズベクは，スルタンに拝謁した際に，その玉座の豪華さや，そばに整列する(2)イェニチェリ軍の秩序と静寂とに驚嘆した。彼は，書簡でオスマン帝国の能力主義の昇進システムが優れていることを伝え，ヨーロッパの門閥主義や身分社会と対比した。実際にオスマン帝国は，このような軍隊によって，ヨーロッパ，アジア，アフリカにまたがる(3)広大な領土を獲得し，よく組織された官僚機構を通じて統治したのであった。

Ｂ　16世紀から(4)18世紀のヨーロッパにおいて，戦争は様々な点から大きな変化を遂げることになった。例えば，大砲の攻撃に対応した要塞（ようさい）建設といった軍事的な(5)技術革新が起こり，各国は大規模な軍隊を維持するようになった。それとともに，戦争遂行のために財政基盤の強化が試みられた。自国の生産や流通といった(6)経済活動を管理することを試みていた各国は，(7)ヨーロッパだけでなく，それ以外の地域でも戦争を繰り広げるようになっていった。

　18世紀の大西洋では，西ヨーロッパからの【ア】などを，西アフリカにおいて【イ】に交換し，これを西インド諸島の植民地などに運び，そこから【ウ】などをヨーロッパに送る三角貿易が行われていた。

Ｃ　(8)第一次世界大戦は，史上最初の総力戦である。当初は短期間で終結すると考えられていたが，やがて戦争は長期化し，物量戦・消耗戦となったため，各国では，女性を含む多くの国民が軍需工場に動員されるとともに，国民の消費生活を国民が統制するようになる。こうして戦争が総力戦という様相を帯びるようになると，戦争の勝敗は，人口や生産力，さらには戦争に対する国民の士気などを含めた国力によって決まるという認識が生まれた。1930年代後半には，敵国の産業破壊や戦意喪失を意図する戦略爆撃が重視され，(9)都市を攻撃対象とする空襲が実行されるようになった。こうして，(10)20世紀の戦争では，一般市民の間にも多くの死傷者が出たのである。

　この絵は，【ア】という都市がスペイン内戦の時にドイツ軍に空襲されたことを題材にして，【イ】が描いた作品である。

Ａ　古来，(1)インド洋は東西間の活発な海上交通の舞台であった。そのインド洋を越えて，インドから様々な人や物質，思想・文化が東西の他地域へと渡っていった。(2)インドで発達した宗教や文化を伝えた学者・宗教者，各地の港市を拠点に海上交易に従事した商人，さらには巡礼者など，海を越えていった人々の動機や目的地は様々であった。19世紀には，多くの出稼ぎ労働者が東南アジアやアフリカなどに向かう一方で，高等教育や専門資格取得のために(3)イギリスに向かう人々も少数ではあるが現れた。

　インド洋では，８世紀以降，【ア】の船乗りたちが活発に活動するようになった。明朝皇帝の命を受け，中国からアフリカまで航海した大艦隊を率いた【イ】も【ア】であった。

Ｂ　近代になると，海軍力は国力の重要な構成部分となり，列強は制海権の確保を目指した。清国は(4)19世紀後半，新鋭の軍艦を購入し，海軍力の強化を図った。しかし，その海軍は(5)日清戦争において日本海軍に敗れた。その後，日本海軍は日露戦争でロシア艦隊を破り，西太平洋で海軍力を誇示した。第一次世界大戦後，(6)ワシントン会議で，英米日の主力艦の保有比率が５：５：３とされ，さらに1930年のロンドン海軍軍縮会議で補助鑑の保有比率が英米各10に対し，日本は７弱と決められた。その結果，列強間では一時的な安定状況が生まれたが，日本海軍の強い不満を引き起こした。その後，太平洋戦争が起こり，1942年，日本海軍は【(7)】でアメリカ海軍に大敗を喫した。

Ｃ　アフリカ大陸南端に位置する喜望峰は，大西洋とインド洋の結節点である。ヨーロッパ人が大西洋からインド洋へ向かう航路を開拓してからは，喜望峰はアジアとの貿易の補給・中継地点として重要になった。喜望峰の近くに港湾都市ケープタウンを築いた【ア】人は，その周囲にケープ植民地を形成した。19世紀になると，ケープ植民地は【イ】の領土となったが，やがて(8)スエズ運河が開通したことで，(9)アジア・太平洋地域とヨーロッパを結ぶ航路の中継点としてのケープタウンの役割は相対的に低下した。しかし，ヨーロッパ諸国の(10)アフリカへの進出が本格的になると，ケープタウンは【イ】のアフリカ政策の中心の一つに浮上した。

Ａ　「アメリカ民主主義に対する西部の貢献」（1903年）を著したターナーは，西に向かって拡大するアメリカ合衆国の辺境地域を「西部」という言葉で表現し，その意義を説明した。（引用文は一部書き改め，省略したところがある。） 　西部出身者には，かの(1)ジェファソンや，旧来の保守的な政治を打破した(2)ジャクソン，そしてリンカンがいる。リンカンの体格と，斧（おの）を握り森林を切り開いたその拳（こぶし）は，まさに開拓者らしいものであった。彼は，【(3)】という荒海のなかでも，その大きな手でしっかりと，国家という船の舵（かじ）をとったのだ。 　このように(4)歴代大統領の名を挙げながら，ターナーは，辺境がアメリカ合衆国の民主主義を培ったのだと賞賛する。しかし辺境地域の開拓は，先住民や黒人奴隷などの犠牲の上に成り立っていた。

Ｂ　16世紀中ごろから約300年の間に，(5)ロシアは隣接地域に次々と領土を拡大し，先住民を統治下に組み込むことによって，多種多様な民族を支配する植民地帝国となった。帝国の西部地域では，ある程度の自治が認められることもあったが，全体として，言語や宗教などを通した「ロシア化政策」が推し進められていた。ロシア革命の際に，帝国の崩壊によって，いくつかの(6)独立国家が誕生したが，ヴォルガ川中流域・カフカス・シベリア・中央アジアなど東方の諸民族は，(7)新たに成立したソ連への編入後も，引き続き強力な中央集権体制の下に置かれた。

Ｃ　東北アジアの女真族（満州族）は，南進して北京を都とし，(8)中華王朝の清として東アジアに君臨した。清は来朝する国に対して，冊封や朝貢などの，(9)皇帝（天子）を頂点とする伝統的な君臣間関係を要求した。これに対して，19世紀後半，日本の天皇は皇帝と称し（下図ａ参照），(10)清・朝鮮とそれぞれ修好条規を結んだ。日清戦争を経て，(11)朝鮮の国王は清朝皇帝による冊封を離れて皇帝に即位し，国号を「韓」と改めた（下図ｂ参照）。東アジアの周縁に位置する日本は，国土と国民を一元的に統治する国家の間で結ばれる近代的な国際関係への参入を目指し，さらに列強による植民地獲得競争に加わった。

ａ　日本の天皇が清の皇帝にあてた国書（前半）とその返書の写し

ｂ　駐日朝鮮公使が国号の改称を日本に告げた文書の写し

1863年　朝鮮国王に高宗が即位し，大院君が摂政に就任した。
【ａ】
1869年　対馬藩が，日本の王政復古を朝鮮に通告した。
【ｂ】
1875年　日本の軍艦雲揚が，江華島の砲台を破壊した。
【ｃ】
1884年　朝鮮で，開化派の金玉均らが政変を起こしたが，失敗した。
【ｄ】
1894年　日本軍が朝鮮の王宮が占領した。