2005年度 センター試験【現代社会】問題
(解答番号【1】~【39】)
第1問 次の文章を読み,下の問い(問1~7)に答えよ。(配点 20)
 便利さを追求してきた私たちの生活様式は,知らないうちに(a)環境に負荷を与えていることがある。私たちの日常の暮らしと環境問題とのかかわりを考えてみよう。
 まず,容器や包装について考えてみよう。プラスチックや発泡スチロールなど石油から作られた容器は,ごみとして焼却したり,あぶらに触れたり,調理のために温められたりすると有害物質を排出し生態系を破壊するという指摘もある。また,(b)過剰包装は,不必要な紙を使用するので,【A】の一因になる。
 家電製品についてはどうだろう。例えば,テレビを見終えたとき,主電源を切らずにリモコンでスイッチを切り,再びスイッチを入れたときにすぐ見られるように通電の状態にしておくことがある。これは,私たちが(c)日常生活の中で手軽な便利さを求めている例である。しかし,使用しないのに通電の状態にしておくのは,それだけ無駄な電力を使用して化石燃料を消費することにつながるから,二酸化炭素の排出量を増加させ,それが【B】の一因になっていると言われる。
 自動車が環境に与える影響も度々指摘されており,自動車の排気ガスに含まれる窒素酸化物は【C】の主要な原因である。廃棄された自動車から出る破砕くずやエアコンのフロンも環境負荷を高める。自動車による環境負荷を軽減するためには,(d)電気自動車の開発,排気ガス規制,自動車リサイクルの促進など,様々な環境対策が必要である。
 このように,私たちの生活様式には,環境に負荷を与え,地球環境問題の原因になっているという側面がある。地球環境問題に対処していくには,(e)環境を守るための国際的な取組みが必要であるとともに,(f)私たち一人一人が,毎日の生活の中で努力と工夫を積み重ねていくことが大切である。
問1 文章中の【A】~【C】に入る語句の組合せとして最も適当なものを,次の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【1】
(1) A 森林破壊  B オゾン層破壊  C 酸性雨
(2) A 森林破壊  B 地球温暖化  C 温室効果
(3) A 砂漠化  B オゾン層破壊  C 酸性雨
(4) A 砂漠化  B 地球温暖化  C 温室効果
(5) A 森林破壊  B 地球温暖化  C 酸性雨
(6) A 森林破壊  B オゾン層破壊  C 温室効果
問2 下線部(a)に関連して,次の文公害問題について,は環境問題についての具体例である。下の事件または現象A~Dとア・イとの組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【2】
 コンビナートの工場群から大気中に排出された有害物質が,地域住民の呼吸器を冒し,ぜんそくなどの健康被害を与えた。
 私たちが使用している便利なものの中には,内分泌かく乱化学物質(環境ホルモン)を発生させるものがあり,それが自然界に残留して野生生物の生殖機能に悪影響を及ぼしている。
A 鉱山から流出したカドミウムが土壌や川を汚染し,そのカドミウムを含んだ野菜や魚を食べたために,せきをしただけで骨が折れる病気が発生した。
B ブナ林が立ち枯れた原因を調べると,かなり濃い酸性の霧がたびたび発生していたことが分かった。
C 漂着した海ガメの死骸しがいを調べると,好物のクラゲと間違えて,ビニール袋やプラスチックの破片を食べていたことが分かった。
D 工場廃液中の有機水銀が魚などに蓄積され,人体に取り込まれて中枢神経を冒す病気が発生した。
(1) 【ア】-A,B  【イ】-C,D  (2) 【ア】-A,C  【イ】-B,D
(3) 【ア】-A,D  【イ】-B,C  (4) 【ア】-B,C  【イ】-A,D
(5) 【ア】-B,D  【イ】-A,C  (6) 【ア】-C,D  【イ】-A,B
問3 下線部(b)に関連して,古紙の再生に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【3】
(1) 古紙の回収によって,再生紙の使用を広げて紙資源を再利用するとともに,不必要な紙の消費そのものを減らすことが必要である。
(2) 古紙を種類ごとに分類するのは元の紙製品に再生するため,例えば,使用済みの紙パックを新しい紙パックとして再生するためである。
(3) すぐに捨てられるメモ用紙であっても,消費者は白い紙を求めるので,企業が再生紙を漂白すれば,それは環境にやさしいと言える。
(4) エコマークは,古紙の再生を促進するために,再生紙を使用している紙製品だけに付けられる。
問4 下線部(c)に関連して,私たちの暮らしと環境問題との関係に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【4】
(1) 蛍光灯を白熱灯に替えることによって,消費電力量を少なくし,二酸化炭素の排出量を減少させることができる。
(2) 使用済みのペットボトルや発泡スチロールなどを再利用する技術が実用化されており,循環型社会の実現が進められている。
(3) リン酸塩を含んだ合成洗剤は,家庭排水として川から海に流れ込み,藻の異常発生や赤潮の原因となるので,国内での製造,使用が禁止された。
(4) 有害な化学物質の排出量を規制するために,接着剤,塗料,化粧品などの化学物質を含む商品には,全成分が表示されている。
問5 下線部(d)に関連して,私たちの暮らしの中から生じる環境問題を解決するために,近年の法律で義務づけられるようになったものとして最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【5】
(1) 容器包装リサイクル法で,私たちは,容器や包装をごみに出すとき,プラスチック製のものと紙製のものとに分別して出すように義務づけられた。
(2) 家電リサイクル法で,家電の販売業者は,消費者が廃棄したテレビ,冷蔵庫などを業者の費用負担でリサイクルすることを義務づけられた。
(3) 食品リサイクル法で,私たちは,家庭の食事に伴って出てくる残飯や食用に供されなかった食品など,食品廃棄物の減量化を義務づけられた。
(4) グリーン購入法で,消費者は,長く使える商品,再使用できる容器,包装のない商品を購入するように義務づけられた。
問6 下線部(e)に関する記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【6】
(1) オゾン層保護のためのウィーン条約が採択され,この条約を具体化するモントリオール議定書が発効し,フロン削減の具体案が定められた。
(2) 地球温暖化対策のために,気候変動枠組み条約が採択され,温室効果ガスの排出量削減の具体的なルールや目標が定められた。
(3) 地球温暖化防止や生物資源の保全など環境保護に関する行動計画をまとめるために,リオデジャネイロで地球サミットが開催された。
(4) 環境破壊によって生息地を奪われ,絶滅が危惧きぐされる生物種を保護するために,ストックホルムで国連人間環境会議が開かれた。
問7 下線部(f)に関して,環境問題に対して私たちが心掛けるべきことを述べたものとして適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【7】
(1) 私たち一人一人が環境にやさしい生活を心掛けても,それが直ちに成果として現れるとは限らない。環境保護には,環境破壊に対する危機認識が個人のレベルで薄れやすいことにも留意して取り組む必要がある。
(2) 私たちは便利な生活を豊かな生活であると考えて,これまで大量生産,大量消費,大量廃棄を繰り返してきたが,本当に豊かな生活とは何かを見直して,資源やエネルギーを大切にする生活を考える必要がある。
(3) 家庭でできる省資源・省エネルギーなど環境保護の工夫を図るには,生化学や環境学などの高度の専門知識が不可欠であり,専門知識を身に付けてから取り組まなければならない。
(4) 環境問題から発生する様々な影響は,その多くが私たちの世代だけでなく子や孫など将来の世代にもかかわるので,その影響が具体的に現れてから対策を始めるのではなく,今できることを実行することが大切である。
第2問 次の文章を読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
 行政改革と社会権的基本権の関係について考えてみよう。大衆民主主義のもとでは政治参加の基盤が拡大したことに伴い,多くの人々の要求が政治の場に取り上げられるようになった。(a)国家が社会的・経済的弱者の生活に積極的に関与すべきだとする立場から社会権的基本権を保障する動きが強まり,経済活動の高度化などとあいまって,国家活動の増大と行政権の拡大がもたらされた。
 今日では,国家機構の膨張と介入の拡大は社会的な活力の喪失と財政硬直の一因だとされ,「小さな政府」を目指す行政改革が提唱されている。もちろん現代の行政改革が19世紀西欧型の国家や社会のあり方を理想としているものでないことは明らかである。当時は,国家の機構も単純かつ小規模であったとはいえ,フランス人権宣言が表明しているような(b)近代国家の原則の承認にもかかわらず,実際には一部の人々のみが(c)参政権を行使する仕組みになっていたからである。
 行政府が税金の無駄遣いをなくすように努めることは当然であるが,行政改革の名のもとに,弱者の保護を内容とする社会権的基本権まで空文化して行くことは,民主主義の発展の芽を摘んでしまうことにもなりかねない。弱者への適切な配慮を欠いたまま「小さな政府」への動きを強引に推し進めた場合,政治的軋轢あつれきが高じて社会的混乱が生じることさえも考えられるからである。現代の行政改革においては,十分な(d)情報公開による透明性の高い取組みが行われ,国民の側のしっかりした合意が得られなければならない。
問1 下線部(a)に関する記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【8】
(1) 日本国憲法は,健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を国民に保障し,国は社会福祉社会保障公衆衛生の向上及び増進に努めるべきだとしている。
(2) 工業社会の到来に伴い,大きな富を手に入れた市民による大規模な経済活動を振興・促進するために,国家は,財産権の保護を目的とする制度を整えた。
(3) 資本主義経済が発展するにつれて,それまでは体系的,本格的に取り組まれなかった社会的・経済的弱者の生活環境整備,教育,雇用,医療などが,公的な政策課題として浮かび上がってきた。
(4) ドイツのワイマール憲法は,経済への国家の介入とともに,労働基本権生存権を明記しており,日本国憲法など現代の憲法に対して大きな影響を与えた。
問2 下線部(b)に関連して,次の文章は近代国家における政治的原理と政治参加の問題について述べたものである。文章中の【A】~【C】に入る語句の組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【9】
 基本的人権の保障権力分立,【A】など,日本国憲法において見られるような近代国家の政治的基礎となる諸原理は,絶対主義の体制を変革し,新しい社会制度を築こうとした市民革命と呼ばれる政治的大変動のなかから生み出された。
 こうした市民革命の背景には,ブルジョア階級の台頭と近代合理主義や【B】の普及があった。しかし,参政権という点に注目すると,市民革命は今日のような選挙制度を直ちにはもたらさなかった。市民革命を成し遂げた諸国においても,当初,参政権には納税額や財産による条件が課せられた結果,貧しい社会階層に属する人々が政治参加の場から閉め出され,【C】の参政権も認められない制限選挙制であった。
 日本国憲法が定めるような選挙権や被選挙権が広く保障されるまでには,長い苦難の歴史があったのである。
(1) A 国民主権  B 社会契約説  C 農 民
(2) A 国民主権  B 社会契約説  C 女 性
(3) A 国民主権  B 社会主義思想  C 農 民
(4) A 議会主権  B 社会契約説  C 女 性
(5) A 議会主権  B 社会主義思想  C 農 民
(6) A 議会主権  B 社会主義思想  C 女 性
問3 下線部(c)に関連して,今日の日本における国政選挙に関する記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【10】
(1) 衆参両院議員を選挙する権利は,ある人を一定の公務員の地位に就けたり罷免したりする権利を認めている参政権の一種である。
(2) 選挙においては,平等の原則が重視され,特定の投票者の票が特別に重視されることはない。
(3) 選挙管理に当たっては,だれが誰に一票を投じたかなどの投票内容の秘密は厳格に守られなければならない。
(4) 選挙権は憲法に定められている重要な権利であり,日本国籍を有し,日本国内に居住している20歳に達した男女のみが行使できる。
問4 下線部(d)に関連して,日本における情報公開法に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【11】
(1) 国の安全保障や個人に関する情報は開示されない場合もあり,外交・防衛・捜査情報を開示するか否かは,関係する行政機関の長の判断による。
(2) 各機関に対して行政文書の公開を要求できるのは,日本国籍を有し,日本国内において定職に就いている成人に限られている。
(3) この法律は政府が自らの活動を国民に説明することを目的としており,その意味から衆参両院や裁判関係の書類も公開対象に含まれる。
(4) 情報公開の対象となる公開文書とは,紙に印刷された情報を指し,電子的な媒体に記録された情報を含まない。
第3問 次の文章を読み,下の問い(問1~7)に答えよ。(配点 20)
 自分とは何か,自分らしさとは何か。(a)青年期は,自分の個性を自覚する時期である。自分らしさの自覚は,様々な他者とのかかわりによってもたらされる。皆さんは,どのような人とどのようにかかわり,また,かかわっていこうとしているのだろうか。この時期には,心の友を求めるようになるなど,(b)友人関係に関する欲求も変化する。ここでは,人とのかかわりの基礎について考えてみよう。
 人と付き合うとき,私たちは一般に,相手はどのような人物か探ろうとする。外見や話し方,振る舞い方等,目や耳から得た(c)情報を手掛かりとして,「明るい・思いやりがある・几帳面きちようめん」とか,「気が強い・知的な・冷たい」などの印象を持つ。このような印象は付き合いを通して変化しうるものではあるが,自分なりに納得した段階で,これはこの人が実際に持っている性格であると認識する。(d)このような認識は,あくまでも,私たちが他者の性格について行った推論にすぎないのだが,その人に対する私たち自身のかかわり方に影響を及ぼす
 他者の性格についての推論の過程には,私たち一人一人が持つ固有の人間観が,言わば無意識のうちに働くという考え方がある。これは,暗黙裡あんもくりの人間観と呼ばれているが,日ごろはほとんど意識することはないので,これを自分ではっきりととらえることは,一般的に難しい。しかしながらえて,例えば,自分はどのような観点で人を見る傾向があるか,あるいは,(e)どのような観点を重視する傾向があるか,特に意識して振り返ってみよう。「自分の場合は,明朗性と誠実性。」と言う人もいるだろう。「自分は,やはり,協調性。」と言う人もいるだろう。これらは,いずれも,その人が持つ暗黙裡の人間観の一端を表していると解釈できる。
 他者の性格についてバランスのとれた適切な認識を行うためには,自分の暗黙裡の人間観をまずは意識化し,もし何らかの偏りが見られるなら,様々な対人場面で,その偏りを修正・補正する作業を意識的に行い,これを習慣化することである。この作業は,最初から容易にできることではない。しかし,繰り返しこれを行うことにより,やがて人の見え方もおのずと変わってくるだろう。この変化は,友人選択範囲の拡大と友人関係の深まりをもたらし,また,人間関係に起因する(f)欲求不満の解消にも通じるものと考えられる。
問1 下線部(a)に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【12】
(1) この時期はモラトリアムと言われるが,この用語は,子どもと大人の間の「境界人」という意味を端的に表している。
(2) この時期は普通10代前半から24~25歳頃までを指すが,この年齢区分は時代や社会にかかわらずほぼ一定である。
(3) この時期は心理的離乳期とも言われるが,これは,子どもが親の管理からの解放を望み,自立を試みることを意味する。
(4) この時期は第二次性徴が現れる時期であるが,そのような身体的変化が始まる年齢は,近年徐々に高くなる傾向にある。
問2 下線部(b)に関連して,次のは,中学生から大学生を対象に,「友達に望むことや接し方,友達への気持ち」についてアンケート調査し,統計的な方法を用いてこれらを表す諸項目をグループ分けした結果をまとめたものである。欲求Iのグループとして分類された項目群と「同調欲求」という名称との関係を参考に,友人関係の欲求IIおよび欲求Ⅲの名称として最も適当なものを,欲求IIについては下のA群の(1)~(4)のうちから,欲求Ⅲについては下のB群の(1)~(4)のうちからそれぞれ一つずつ選べ。【13】・【14】

榎本淳子「青年期の友人関係における欲求と感情・活動との関連」『教育心理学研究』第48巻(2000年)により作成。内容を一部変更。

問3 下線部(c)に関連して,マスメディアによって提供される情報についての記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【15】
(1) マスメディアによって提供される情報は,政治家や政党に対して人々が印象・イメージを形成する際の手掛かりとなっている。
(2) マスメディアによって提供される情報は,これに依存する大衆社会の人々の生活意識や政治意識を多様にする。
(3) 政治権力や諸団体の情報提供者が,マスメディアを利用して世論操作を図ろうとすることは,あり得ることだ。
(4) 広告収入確保の観点から,マスメディアによって提供される情報には,スポンサーの意向が反映されている場合がある。
問4 下線部(d)に関して,その具体例として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【16】
(1) 私は,クラスメートのAは堅物だと思っていたので,カラオケやゲームセンターに行くときは,誘わないようにしていた。
(2) 私は,部活のとき,気が弱そうな後輩に対しては,そうでない後輩に対してより,優しく指導するようにした。
(3) 電車の優先席に座って本を読んでいた私は,お年寄りが目の前に立っているのに気付き,すぐさま座席を譲った。
(4) ボランティアで訪問した独り暮らしのお年寄りは,気さくな方だと思えたので,私は最初から積極的に話ができた。
問5 下線部(e)に関して,次の図1,図2は,10人の顔写真を大学生Aさんに一枚ずつ見せ,「温厚性」,「理知性」という二つの観点での各人物に対する印象と各人物に対する好意度の評定を,いずれも下の図3に示した形式で求め,評定点を用いてその関係を図示したものである。好意度は人とのかかわり方に大変重要な影響を及ぼすものである。このことを前提に図1,図2から読み取れる事柄の記述として最も適当なものを,次ページの(1)~(4)のうちから一つ選べ。【17】

図1 「温厚性」と「好意度」との関係

図2 「理知性」と「好意度」との関係

(注)図中の点は,Aさんが評定した10人の人物を,評定点を用いて座標上に位置づけたものである。なお評定点は,図3のように1~7点として配点されている。

図3 印象の評定および好意度の評定で用いた7段階の回答形式

(注)各評定に際し,○○には,「温厚」,「理知的」,「好き」などの言葉が入る。
(1) Aさんの場合,「温厚性」という観点より,「理知性」という観点を重視しているようだ。
(2) Aさんの場合,「温厚性」という観点も「理知性」という観点も,同程度に重視しているようだ。
(3) Aさんの場合,「理知性」という観点も「温厚性」という観点も,どちらも重視していないようだ。
(4) Aさんの場合,「理知性」という観点より,「温厚性」という観点を重視しているようだ。
問6 下線部(f)に関連して,欲求不満に直面したときの反応例A~Cと,それを説明する防衛機制の種類ア~エとの組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【18】
A 好きな異性に対して,わざと意地悪く対応したり,冷たく接したりする。
B 好きな異性のことを,「ああいうタイプは,きっと自分には合わない。」と理由付けし,あきらめる。
C 満たされない性的欲求を芸術活動などに打ち込むことで解消する。
 昇 華   合理化   反動形成   代 償
(1) A-  B-  C-
(2) A-  B-  C-
(3) A-  B-  C-
(4) A-  B-  C-
(5) A-  B-  C-
(6) A-  B-  C-
問7 本文全体の趣旨から判断して内容的に適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【19】
(1) 自分らしさの自覚は,様々な他者とのかかわりによってもたらされるため,人とのかかわり方について自己を振り返る意義は大きい。
(2) 他者とのかかわり方は,その人とはかかわらないという選択肢も含め,その人物の性格をどのように認識しているかによって影響を受ける。
(3) 個々人が持つ暗黙裡の人間観は,他者の性格に関して,多面的で正確な認識を私たちにもたらす働きをしている。
(4) 個々人が持つ暗黙裡の人間観の意識化を経て,これまでとは異なる観点で他者を見ることにより,思わぬ友人を得ることがある。
第4問 ある高校の現代社会の授業で,先生(T)と二人の生徒(A,B)との間になされた次の会話文を読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
A 私の祖父は九州の山村でシイタケ栽培をしているのですが,1980年代末から外国産の安い干しシイタケの輸入が急増したのに対して,日本の干しシイタケ生産量はそのころからずっと減少し続けているそうです。
T シイタケに限らず,(a)日本の農産物輸入は増加の一途だね
B 僕の叔父は東京都内で小さな工場を経営しているのですが,発注元の大企業が最近中国に工場を移転し,受注が大きく減った上に,90年代初めに(b)バブル経済が崩壊してからは,金融機関が融資を渋りがちだと嘆いています。
T 日本の農家や中小企業はどこも大変な状況だね。国際競争に直面した農家や中小企業にとって,何か有効な対策はあるのだろうか。
A 私は,(c)農家や中小企業が生産の現場などでいろいろな創意工夫を積み重ねていくことで,何とか活路が開けるのではないかと思います。もちろん,これは外国の企業との競争に苦しむ大企業にも言えることですけど。
B でも,国際分業が拡大しているのだから,日本の産業の一部が海外に移転するのは仕方ないことではないのかなあ。大事なことは新たな産業をつくり出していくことだよ。
T どちらの意見も間違ってはいないと思うよ。いずれの場合もかぎを握るのは(d)技術革新だ。技術革新がなければ,既存の産業の国際競争力を高めていくことはできないし,新たな産業を創出することもできないからね。
問1 下線部(a)に関連して,1990年代における日本の農畜産物輸入の自由化についての記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【20】
(1) 日本は,APEC(アジア太平洋経済協力会議)で,牛肉とオレンジの輸入自由化に合意した。
(2) 日本は,ガットの多国間協議で,コメの輸入自由化に合意した。
(3) 日本は,サミット(主要国首脳会議)で,牛肉とオレンジの輸入自由化に合意した。
(4) 日本は,日米包括経済協議で,コメの輸入自由化に合意した。
問2 下線部(b)に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【21】
(1) 1990年代初めに湾岸戦争勃発ぼつぱつし,その後,日本が国際貢献の財源として消費税を導入したことによって,それまでの過剰な消費ブームが急速に冷め,その結果,バブル景気に終止符が打たれた。
(2) バブル崩壊後,海外の資金が日本の金融市場から一斉に逃避したが,政府が金融監督庁を設置し,金融機関をきめ細かに指導する,いわゆる護送船団方式に転じたので,外資の逃避には歯止めが掛かった。
(3) バブル崩壊後,企業のリストラ(事業の再構築)が進み,有効求人倍率も低迷し続けたので,日本全体の失業率は悪化した。
(4) 2000年代初めになると,バブル崩壊の傷もえ,例えば三大都市圏の地価水準は,軒並みバブル崩壊直前の水準に戻った。
問3 下線部(c)に関する具体例として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【22】
(1) コメを自由に売買することが原則として認められたことを受けて,農家のなかには,有機肥料と無農薬とを組み合わせた有機農法によるコメの生産で消費者の健康志向に応えようとするものもある。
(2) 法人企業が農業経営に参入することは認められているので,農家のなかには,農地の取得やブランド品種の育成,販路の開拓などに必要な多額の資金を得るために,法人企業となるものもある。
(3) 単純労働に従事する外国人労働者を雇用することが原則として認められたことを受けて,中小企業のなかには,近年,外国人労働者の雇用拡大によって,労働コストを切り下げ,業績を挽回ばんかいしているものもある。
(4) 企業対企業の電子商取引が拡大していることを受けて,高い技術を持つ中小企業のなかには,インターネットを活用して自らの技術を売り込み,国内外の取引を積極的に展開しようとするものもある。
問4 下線部(d)に関する次の文章中の【A】~【C】に入る語句の組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【23】
 日本の高度経済成長期に技術革新が著しく進んだのは,【A】や【B】などの素材産業であったが,石油危機後は,省エネルギー型産業において技術革新が進んだ。そして,現在では,バイオテクノロジー,ナノテクノロジー,ソフトウェア開発などの,研究開発が重要な役割を果たす【C】集約型産業において,技術革新が一層進みつつある。
(1) A 石油化学  B 鉄 鋼  C 知 識
(2) A 綿織物  B ファインセラミックス  C 知 識
(3) A 石油化学  B 鉄 鋼  C 資 本
(4) A 綿織物  B 鉄 鋼  C 資 本
(5) A 石油化学  B ファインセラミックス  C 知 識
(6) A 綿織物  B ファインセラミックス  C 資 本
第5問 次の文章を読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
 1990年代の日本経済は「失われた10年」と言われる。90年代初頭の日本は,経済・財政の両面ともに,他の主要先進国と比較して良好な状況にあった。ところが,バブル経済が崩壊すると,事態は一変した。過剰な債務を抱えた企業はリストラを進め,雇用不安から家計も消費を縮小した。一方,政府は公共投資など景気浮揚のため積極的な財政政策をとったが,意図した効果はなく,財政収支の赤字は拡大した。この間,(a)政府債務の水準は著しく悪化し,90年代末には日本は主要先進国のうちで最悪の重債務国となり,日本国債の格付けも大幅に引き下げられた。
 日本においては,社会保障制度の拡充が,急速な高齢化の進展とあいまって,年金・医療等の社会保障費の著しい増加をもたらしている点も,財政悪化の大きな原因である。(b)国の一般会計においても,社会保障関係費の一般歳出に占める割合は最大であり重い負担となっている。日本の(c)少子化・高齢化のスピードは先進国の中でも際立っており,高齢世代を現役世代がどう支えるかが課題である。
 今後,日本の人口は減少に向かい,一層の高齢化が予測されている。増加が見込まれる社会保障費の負担を賄う方法としては,社会保険料の引上げや増税といった方法が考えられる。それらが難しい場合には,更なる財政赤字の拡大,政府債務の増加という事態にならざるを得ない。日本の厳しい財政状況を省みて,今後の(d)税と社会保障負担のあり方について,国民的コンセンサスの形成へ向けて議論を深めることが必要である。
問1 下線部(a)に関連して,次のは,主要先進7か国の政府債務水準(政府債務の対GDP比)の1990年以降の推移を示したものである。このに関する下の記述ア~ウを参考にして,中のA~Dに当てはまる国名の組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【24】
財務省『財政の現状と今後のあり方』(2003年)により作成。
 ドイツとフランスは,ともに,1990年から2000年までの期間における政府債務水準のピークを1990年代後半に迎えた。
 イギリスは,カナダとともに,1990年代後半以降,政府債務水準の上昇傾向が鈍化し,その後も悪化の動きが見られない。
 アメリカは,主要先進国の中で唯一,2000年における政府債務水準が1990年に比較し改善した。
(1) A フランス  B アメリカ  C 日 本  D イギリス
(2) A フランス  B アメリカ  C イギリス  D 日 本
(3) A 日 本  B フランス  C アメリカ  D イギリス
(4) A 日 本  B イギリス  C フランス  D アメリカ
(5) A イギリス  B 日 本  C フランス  D アメリカ
(6) A イギリス  B フランス  C アメリカ  D 日 本
問2 下線部(b)に関連して,1990年代の日本政府の一般会計予算の特徴に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【25】
(1) 財政構造改革の進展により国債の新規発行が抑制されたことから,国債費の歳出に占める割合は著しく低下した。
(2) 年金や医療の財政負担がかさんだことから,社会保障費の歳出に占める割合は著しく増大した。
(3) 景気対策として公共投資の拡大が続いたことから,公共事業費の歳出に占める割合は90年代後半以降著しく増大した。
(4) 教育の質の向上を図るねらいから,文教科学振興費の歳出に占める割合は著しく増大した。
問3 下線部(c)に関する記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【26】
(1) 少子化・高齢化に伴う労働力人口の減少を補うためには,女性や高齢者の雇用促進や外国人労働者の受入れなどが有効な手段である。
(2) 日本は,出生率の低下とあいまって高齢化率が急上昇しており,現在ではスウェーデンを上回る世界でも有数の高齢社会となった。
(3) 日本における少子化対策は,出生率の低下に歯止めを掛けることを主眼としており,人口構成の高齢化の進行を抑制する効果は期待できない。
(4) 高齢化問題は,経済発展が進み所得水準が先進国に近づきつつある途上国においても近年問題とされており,先進国のみに特有の現象とは言えない。
問4 下線部(d)に関連して,次の図は主要先進国5か国の国民負担率(租税負担と社会保障負担の合計が国民所得に占める割合)を示したものである。この図から読み取れることとして最も適当なものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【27】
税制調査会『少子・高齢社会における税制のあり方』(2003年)を一部改変して作成。
(1) 日本の国民負担率はアメリカと並び低水準だが,財政赤字を含む潜在的な国民負担率で見ると,イギリスの国民負担率を上回り,50%に近づいている。
(2) 社会保障制度の先進国であるヨーロッパの3か国では,手厚い社会保障に見合う重い国民負担をしており,社会保障負担率は日本を上回っている。
(3) 消費課税中心の租税制度を持つヨーロッパの3か国では,国民負担率が高い国ほど,租税負担率が高くなっている。
(4) 日本の社会保障負担率はアメリカやイギリスと比較すると高いが,租税負担率で見ると両国を下回っている。
第6問 次の文章は,日本の安全保障について語る高校生Xとその祖父Yとの会話である。これを読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
X 今日,学校で憲法の平和主義について勉強したんだ。憲法ができたときみんなはどんな気持ちだったの。
Y 悲惨な戦争体験をして,もう戦争はしたくないという気持ちを多くの国民は持っていたから,戦争をしないと決めたことは歓迎されていたんだよ。
X でも今では,日本の防衛費は,世界でもトップクラスなんだよね。
Y 朝鮮戦争をきっかけにして今の自衛隊になる組織が作られたんだ。それに,外国から攻められたら困るじゃないか。だから,(a)日米安保条約を結んで,アメリカと軍事的に協力して,安全保障を図る方向に政策が変わっていったんだよ。
X 憲法の条文を読めば,戦争はしないし,そのための軍事力は持てないよね。自衛隊はそれと矛盾しないのかな。
Y (b)政府は矛盾していないって説明しているよ。おじいちゃんも,集団的自衛権を行使せず,専守防衛に徹するなら軍事力は必要だと思う。おまえはどう思う。
X 自衛の範囲はハッキリしないし,それに,軍事力を強化すると他の国はそれ自体を脅威に感じるから,軍事力を持たずに,安全保障を図る方がいいよ。
Y でも,経済大国なんだから,国際社会の中でそれ相応の貢献をしなけりゃいけないし,国際紛争を解決するための(c)軍事的な貢献も必要じゃないか。
X 軍事的な解決って,紛争を一時的には抑えられるけど,根本的な解決にはならないよ。軍事力によらないで,平和をつくり出す努力こそ現実的じゃないかな。
Y 本当に難しい問題だから,一緒に考えようじゃないか。
問1 下線部(a)に関する記述として適当でないものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【28】
(1) 占領軍として駐留していたアメリカ軍は,日米安全保障条約によって,占領終了後も引き続き在日アメリカ軍として日本に駐留することになった。
(2) 現行の日米安全保障条約は,日本の領土と極東の安全を確保する目的でアメリカ軍が日本に駐留することを認めている。
(3) 現行の日米安全保障条約は相互防衛条約だから,日本国外でアメリカ軍が攻撃された場合にも日本の自衛隊は共同して相手を攻撃することが義務づけられている。
(4) 日本は,日米安全保障条約では義務づけられてはいないが,「思いやり予算」としてアメリカ軍の駐留経費の一部を負担しており,それによって,駐留アメリカ軍人の住宅やスポーツ施設なども建設されている。
問2 下線部(b)に関連して,日本の防衛政策についての記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【29】
(1) 「核兵器を持たず,作らず,持ち込ませず」という非核三原則は,政府によって表明され,国会でも決議されている。
(2) 1970年代以降,防衛費はGNP比5%から10%の間で推移している。
(3) 国防に関する重要事項の決定は,国会の中に設置されている安全保障会議で行われる。
(4) 自衛隊の最高指揮権は,文民である防衛庁長官にある。
問3 下線部(c)に関連して,次の文章は自衛隊の海外派遣に関する記述である。文章中の【A】~【C】に入る国名の組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【30】
 1992年の国連平和維持活動協力法(PKO協力法)の成立により,長期にわたる戦乱と国内混乱が続いていた【A】へ初めて自衛隊が派遣され,停戦監視などの業務に当たった。翌年には,アフリカ大陸の東にある【B】で輸送業務などを行い,その後も,ルワンダ難民救援,ゴラン高原停戦監視,東ティモール避難民救援などへ,その活動範囲を広げた。これらは国連安全保障理事会の決議に基づくものであった。
 さらに,2001年9月に起こったアメリカ同時多発テロを受けて,テロ対策特別措置法が制定され,それに基づいて自衛隊は同年秋から【C】に展開するアメリカ軍の後方支援を行うようになった。
(1) A ミャンマー  B エチオピア  C アフガニスタン
(2) A ミャンマー  B エチオピア  C イラク
(3) A ミャンマー  B モザンビーク  C イラク
(4) A カンボジア  B モザンビーク  C アフガニスタン
(5) A カンボジア  B モザンビーク  C イラク
(6) A カンボジア  B エチオピア  C アフガニスタン
問4 次の意見ア~エは,日本の安全保障に関するものである。本文中の会話から読み取れるX,Yの立場とこれらの意見との組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【31】
 日本は,自国と直接関係のない紛争地域への軍事介入は行うべきではないが,その地域に展開する同盟国への武器供与は積極的に行うべきである。
 日本は,自国が直接攻撃されたときに備えて,軍事力も含めた必要な実力を備えるべきである。
 日本は,周辺国で日本への攻撃が可能な武力が配置された場合には,それを事前に攻撃するべきである。
 日本は,国際紛争に際しても,軍事部門への貢献をするのではなく,外交努力とともに,民生部門に限った国際貢献をするべきである。
(1) X-ア  Y-イ  (2) X-ア  Y-ウ
(3) X-イ  Y-ア  (4) X-イ  Y-ウ
(5) X-エ  Y-イ  (6) X-エ  Y-ウ
第7問 次の文章を読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
 君たちの中には,(a)地域通貨という言葉を耳にした人もいるだろう。日本国内でも様々な地域通貨が発行されている。地域通貨にはいろいろなタイプがあるが,それらは一般に,法定通貨とどのような点で異なるのだろうか。
 法定通貨は,中央銀行や政府が発行し,一国の全体に流通するものである。これに対して地域通貨は,NPO(民間非営利組織)や(b)ボランティア活動を行う団体などが自発的に発行するものであり,その流通は特定の地域または特定の参加者の間に限られる。例えば,ある商店街の有志によって発行された地域通貨は,その商店街の外で流通することはない。原則として法定通貨と交換されず,貯蓄されることもないから,その商店街の活性化のために役立つことが期待される。また,不特定多数の人々の間で授受される法定通貨とは異なり,特定の参加者の間でお互いの求めるサービスをやり取りするために地域通貨を用いることも可能となる。そのことは,今後ますます(c)高齢化の進む社会における生きがいの実現という問題とも結び付いてくる。例えば,豊かな育児経験を持ちながらそれを地域のために役立てる機会がなかった高齢者も,地域通貨を媒介として,近隣の人々が求める子育て支援のサービスを提供できるようになるかもしれないのである。
 地域通貨をめぐる評価は依然として流動的であり,その将来にも不透明なところは多い。しかし,地域通貨は,(d)地域経済の活性化やコミュニティの再生に向けた試みの,少なくとも一端を担うものと言えるのである。
問1 下線部(a)に関連して,次のおかねに関する発言ア~エは,現在の日本銀行券に関する発言Aと,何らかの地域通貨(実在するものとは限らない)に関する発言Bとに分かれる。その組合せとして最も適当なものを,本文における地域通貨の説明を参考にして,下の(1)~(6)のうちから一つ選べ。【32】
 田舎の祖母の肩たたきをしたらおかねをくれたけれど,かさばらないように銀行で五千円札1枚に替えてもらったよ。
 先月海外の被災地に救援物資を送るNPOに参加しておかねをもらったけれど,今月使うには10円の印紙を貼らなければならないんだよ。
 去年地元の商店街の掃除の手伝いをして,お礼に受け取ったおかねを郵便局に預けておいたら,利子が付いたけれど,本当に少しだったよ。
 他県にいる仲間たちとお互いの頼み事を引き受けあうサークルを作っているんだけど,このサークル内で手数料の支払いに使われているおかねは,近所の店では使えないんだよ。
(1) A-ア,イ  B-ウ,エ  (2) A-ア,ウ  B-イ,エ
(3) A-ア,エ  B-イ,ウ  (4) A-イ,ウ  B-ア,エ
(5) A-イ,エ  B-ア,ウ  (6) A-ウ,エ  B-ア,イ
問2 下線部(b)に関連して,次の図1図2は,日本を含む5か国(日本,韓国,アメリカ,フランス,イギリス)について,年齢階層別に見たボランティア活動参加率と,ボランティア活動等に関する若者(18~24歳)の意識調査の結果とをそれぞれ示したものである。これらのについて述べられた次ページの発言ア~ウを参考に,図1・図2の中のA~Dに該当する国名の組合せとして最も適当なものを,次ページの(1)~(6)のうちから一つ選べ。【33】
図1 年齢階層別に見たボランティア活動参加率
図2 ボランティア活動等に関する若者の意識
図1,図2ともに経済企画庁編『国民生活白書』(平成12年版)により作成。
 25歳以上のボランティア活動参加率は,韓国よりも日本の方が高いんだね。35歳以上のボランティア活動参加率を見ると,日本はフランスよりも高い。
 アメリカは,ボランティア活動参加率がどの年齢階層でもイギリスと1位,2位を争うほど高いね。
 アメリカとイギリスとでは,「ボランティア活動に興味がある」人の割合はあまり差がないけれど,「自国のために役立つと思うようなことをしたい」人の割合は,アメリカの方が大分低いんだね。
(1) A イギリス  B アメリカ  C 韓 国  D 日 本
(2) A イギリス  B アメリカ  C 日 本  D 韓 国
(3) A アメリカ  B イギリス  C 日 本  D 韓 国
(4) A アメリカ  B イギリス  C 韓 国  D 日 本
(5) A 韓 国  B 日 本  C イギリス  D アメリカ
(6) A 日 本  B 韓 国  C アメリカ  D イギリス
問3 下線部(c)に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【34】
(1) 高齢者が不自由を感じないで暮らせるように,高齢者専用の公園や交通機関などを増やすべきだとする,ノーマライゼーションという考え方が広まりつつある。
(2)高齢化の進行に伴い,国民年金の受給者が増えているが,日本の高齢社会を国民全体で支えていくために,20歳以上の国民は原則として国民年金(基礎年金)への加入を義務づけられている。
(3) 高齢化の進行とともに,退職後の生活を充実させる趣味や遊びの意義を重視する傾向が強まり,生涯学習の必要性が疑問視されるようになった。
(4) 日本の高齢者福祉では,従来から老人ホームなどによる施設サービスが主流であり,在宅サービスを拡充するための計画は作られていない。
問4 下線部(d)に関連して,日本の地域開発や地域経済に関する記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【35】
(1) 地域開発を促すための有力な計画として,IT(情報技術)を活用して首都機能を地方に移転しようとするテクノポリス計画が推進されている。
(2) リゾート地の乱開発によって引き起こされる地域の自然破壊に歯止めを掛けるために,総合保養地域整備法(リゾート法)が施行されている。
(3) 地域経済の活性化のための施策の一つとして,全国規模で通用する特産品を作ろうとする一村一品運動が,各地の市町村で行われている。
(4) 地域経済の活性化に期待をかけて都市部を離れた人々が,地価下落の著しい都市部に再び戻ってくるという現象は,一般にUターン現象と呼ばれる。
第8問 次の文章を読み,下の問い(問1~4)に答えよ。(配点 10)
 世界には,経済,教育,情報,健康などに関し,ハード,ソフトの両面にわたり(a)様々な地域格差が存在している。そのため,豊かな生活を求める人々の流れが生まれる。さらに,近年の情報・通信技術及び運輸・交通手段の発達や様々な規制の緩和が,そうした状況に拍車をかけている。
 急激で大規模な(b)人口移動は様々な問題をもたらす。例えば,開発途上国では首都に人口が集中する傾向にあるが,都市基盤などハード面の整備の遅れは,スラムなど劣悪な生活環境を生んでいる。農村から都市へ高い賃金を求めて流入した人々の多くは,高度な職業技能を身に付けているとは限らず,無職か低賃金の仕事に就かざるを得ず,スラムなどの不衛生な環境で暮らしている。
 こうした(c)貧困状態を改善するためには,ハード面の都市基盤を整備して衛生的な生活環境をつくるとともに,それを維持する経済的条件の改善が必要である。また,経済状態を継続的に改善し維持するためには,個人の職業能力を発達させる教育制度や能力の発揮を保障する社会制度などのソフト面の整備も必要である。
 世界の様々な貧困地域は,歴史,文化,社会制度,技術水準などそれぞれに異なった状況に置かれている。そのため,各地域が貧困から脱却するには,(d)経済成長とともに個人や地域が自律的に課題に対応できる条件を整えることが重要である。
問1 下線部(a)に関連して,国連開発計画(UNDP)は,一人当たり国内総生産(GDP)だけでなく,平均寿命・教育達成度などを加えた合成指標を作成し,人間開発指数(HDI)として毎年発表している。次の表はHDIの上位・下位3か国と日本及びアメリカの諸指標を示したものである。日本までの上位の国々と下位の国々の傾向について次の表から読み取れる内容として適当でないものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【36】
UNDP『人間開発報告書 2003』;UNESCO Institute for Statistics, Gross and Net Enrolment Ratios, secondary (UNESCO Web ページ)により作成。
(1) HDIの上位の国と下位の国の間には,一人当たりGDPの格差とともにインターネット利用者数や5歳未満児の死亡率に格差が見られる。
(2) HDIの下位の国で,中等教育の普及率や国会の女性議員の比率は,一人当たりGDPが増加すると高くなる傾向にある。
(3) HDIの上位の国と下位の国の間には,中等教育の普及率ほど国会の女性議員の比率に明確な格差が見られない。
(4) HDIの下位の国で,一人当たりGDPが高くなると5歳未満児の死亡率が低くなる傾向にある。
問2 下線部(b)に関して,次のA~Gは開発途上国における人口移動の主な要因を示したものである。これらを農村から人口を押し出す要因(I)と,都市に人口を引き込む要因(II)とに分類し,二項目ずつを選んだ組合せとして最も適当なものを,下の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【37】
A 高い出生率による過剰な人口
B 一部の者による優良農地の独占
C 就業機会の豊富さへの期待
D 農耕機械の導入による省力化
E 文化的機会の豊富さへの期待
F 収穫量の不安定さ
G 高賃金への期待
(1) I-A,F  II-C,G
(2) I-A,E  II-C,D
(3) I-B,F  II-D,E
(4) I-B,E  II-D,G
問3 下線部(c)に関連して,近年,難民条約上の難民には含まれないが,貧困を理由として自国を離れざるを得ない人々が増えている。それらにかかわる記述として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【38】
(1) 自国が著しく貧困なので,政治資金を集めるために豊かな国外に亡命を求める者を,いわゆる政治難民と言う。
(2) 干ばつ時の貧困対策として灌漑かんがい施設を建設するために,立ち退きを強制された人々を,いわゆる環境難民と言う。
(3) 居住地の貧困化や犯罪の頻発によって安心して暮らせなくなり,他の地域に移動する人々を,いわゆる紛争難民と言う。
(4) 自国の著しい貧困のために就業の場が無く,人間らしい生活ができないため,豊かな他国へ逃れようとする人々を,いわゆる経済難民と言う。
問4 下線部(d)に関連して,開発途上国では経済成長を促進するための様々な試みがなされている。開発途上国でのそうした例を説明した文として最も適当なものを,次の(1)~(4)のうちから一つ選べ。【39】
(1) 輸入代替工業化とは,それまで輸入していた製品を国産化することで工業化を図ることである。
(2) 経済特別区とは,特定の地区で課税を強化し,その財源で産業基盤の整備を行い,産業の育成に努めることである。
(3) 垂直分業とは,先進工業国間でお互いに生産を得意とする工業製品を輸出し,不得手な工業製品を輸入することである。
(4) 開発独裁とは,特定の産業を保護し,その分野への他の国内企業や外国企業の参入を抑制し,高い経済成長を図ることである。