2009年度 センター試験【世界史B】分析
(1)全体の特徴
出題数は昨年度と同じ4大問で36問。出題形式に大きな変化はなく、正誤判定問題を中心に、2文正誤問題が増加し、年代の配列問題は出題されなかった。時代縦断的、同時代史的に歴史を見ていく力が求められ、時代や分野を融合した組み合わせ問題などもあった。
出題分野では前近代から近世までが増加し、反対に近代は減少した。全体を通してオセアニア・ラテンアメリカ・北欧・内陸アジアなど周辺地域史に関する設問が見られ、時代・地域ともほぼ全範囲から出題されている。昨年多く出題された政治史が減り、社会経済史や宗教の特色を問う文化史の出題が目立った。
地図問題は減少したが、今後とも教科書に掲載される地図や図版・挿絵などをていねいに学習し、理解を深めることが基本となる。また世界の諸地域の出来事について問われる傾向があるので、それぞれの地域・時代の基本事項を確実に身につけていくことが必要である。
(2)各大問ごとの分析
第1問
東アジア・ヨーロッパ・アメリカの生業と労働に関する歴史を柱に、政治・経済・社会・文化の知識が幅広く問われた。正解そのものは標準的なものである。意外に迷いやすい出題(例えば中国の「湖広」と「蘇湖」の区別)も含まれるが、基本的にはテーマに即した社会経済史に関する出題や時代を判定する設問が大半であった。
第2問
世界史における学校・教育を扱った問題で、中世ヨーロッパまでの出題が多かった。中国の官吏登用制度は定番のものだが、イギリスの教育法、アズハル学院などの知識は盲点となりやすい。北欧4国を扱った問題はやや難問である。また第二次世界大戦後の東欧に関する出題も、地図を用いてユーゴスラヴィアに関する知識が問われるなど、かなりの知識を問う出題となったため多くの受験生が苦戦したと思われる。
第3問
世界各地の信仰や宗教のあり方が、社会や文化の動向と関連づけて問われている。出題地域が広く、死後の世界に対する観念など高度な知識も問われ、受験生を迷わせた。銅鼓の写真からドンソン文化を判断させるのはやや難である。「接触と交流」を意識した出題もあり、オセアニアへの進出に問われるなど周辺的な地域を扱った出題が目立った。
第4問
ラテンアメリカ、インド、中央ユーラシアなど移民や先住民の状況を中心に、「接触と交流」の趣旨を反映した大問である。学習の盲点となりやすく前近代の分野を中心とする人々の移住や移動に関する知識が問われた。写真を用いた設問では古代の文字に関するもの、地図問題ではセルジューク朝の西進する経路図を判断させる出題であった。アンゴラがどこから独立したかやエフタルや月氏、匈奴が活躍した時代を正確に理解しなければならず、難易度は高い。